活用事例④財産を成長した孫に給付できる家族信託
状況
Dさんの一人息子甲は離婚をしており(その後再婚しています)、息子甲の前妻と息子甲との間には子供がいます。
Dさんは財産を持っているので息子甲に生前贈与をしようとしていましたが、息子甲に生前贈与により財産を渡すと、息子甲と前妻との間の子供へ将来的に遺産として渡ることになり、Dさんの意思に合致しないので、息子甲と現在の妻との間の子供である孫Yに生前贈与によりお金を渡そうと考えています。
また、今はまだ孫Yが幼いので、孫Yが成長し、大学入学時、企業への就職時など、まとまったお金が必要な時に孫Yの支援を行いたいと考え、高校、大学の卒業時に800万円ずつ贈与をしたいと考えています。
家族信託の設計
Dさんは高齢であるので、できるだけ早く生前対策を行っておきたいと思っています。
今回のポイントは、孫YがDさんの財産を受け取る時までに長い時間がかかることです。
そこで、このケースでは、遺言代用信託を活用して解決することが考えられます。
遺言代用信託とは、遺言書を作成しないで、遺言書を作成したときと同じ効果を信託契約により実現する家族信託として理解するとよいでしょう。
>>詳しくはこちらをご覧下さい。
Dさんは、孫Yに高校、大学卒業時に信託した預金が指定された金額だけ渡されるように、家族信託契約書を作成します。そして、Dさんが認知症になるなどして判断能力がなくなったり、Dさんが亡くなったりした後でも、家族信託契約の内容を確実に実行できるように信託契約書を作成します。
委託者はDさん、お金を受け継ぐ受益者は孫Yです。Dさんのお金を孫Yに移すために、Dさんの息子甲が受託者となります。
信託契約書で規定さているとおりに孫Yにお金が渡されることを確保するために、息子が孫Yへお金を渡しているかを監督するための信託監督人(弁護士などの専門職が就任することが考えられます。)を選任するようにしておけばより望ましいでしょう。
家族信託を行うメリット
・家族信託を活用すると、信託された財産の引渡しの金額、タイミングを予め定めておくことができます。
ご自分が引き渡したいと希望する財産の金額、財産の引渡し先、財産の引渡しの時期を、家族信託を設定することで実現させる可能性が高まります。さらに、今回の高校・大学卒業時に財産を引き渡すようにするなど、特定の時期に何回かに分けて財産を渡すことも可能です。